オンライン授業について

  1.  オンライン授業の内容と現時点での感想

    オンライン授業といっても方法は数多ある。私が履修している講義で多いのは、Google Classroomに事前に掲出されたPDFファイルや投下される教員のコメントを閲覧し、Google Formで数問の問題に解答するというもの。これは、動画コンテンツを使用すると、インターネット環境に厳しい学生への配慮としてなされたものと理解している。Googleが提供するこれらのプラットフォームといえども、数百人が履修する大講義の場合、授業時間にアクセス集中するとサーバーに負荷がかかるということから一定期間(2日~1週間がほとんど)程度閲覧可能になっている。Google Formの問題は数日で解答締切になる印象だが、PDFファイルやClassroomのストリームは過去にさかのぼって閲覧できる。期末のレポートを作成して、不明点があれば遡ることもできるから基本的には教員の質問対応の負担は一般的に軽減されたと考える。

    その一方で、インターネット上のこれらのツールを活用することで、学生と教員のアクセスが容易になったと考えることもできる。授業内容に直接は関連しないがその科目に関する疑問等は、教員に質問しやすくなったともいえる。

    純粋に教員が受ける学生からの質問は、増加したかもしれない。

    このように、学生数が多いとアクセス過多になるリスクを考慮して期間に幅をもたせているが、そもそおオンライン授業においてリアルタイムである必要性はあるのだろうか。コロナ禍の影響で実家からの仕送りが減少した学生、アルバイトを掛け持ちし始めた学生も多く修学を継続する上でアルバイト負担が増えている学生は増加している。本来ならば、対面授業では定められた曜日・時限の講義に出席しその場で講義を受けるのだが、インターネットを媒介する授業がリアルタイムでなければならない必要性はないと思う。前述のとおり、動画が掲載されていれば繰り返し閲覧できるというオンライン授業のメリットから考えれば、むしろリアルタイム配信はそのメリットを弱めるといえよう。そうだとすると、教員が学生に一方的に語り掛けるスタイルの講義においては、リアルタイム配信である必要はなく、一定期間閲覧可能なスタイルを執る方が合理的であると考える。

    もっとも、限定を付したように講義スタイルが異なればリアルタイム配信の方がより高い教育効果が期待される。学生による報告・討論を要求するゼミナールがそれである。私が所属する憲法ゼミナールでは、憲法判例百選に掲載されている最高裁判例を毎回1本学生が報告し、それに関する質問対応・論点を設定して討論するなどしている。複数の学生が同時に接続することが必要であるから、必然的にリアルタイムであることが求められる。報告中は事前に配布されているレジュメをPDFで開けば足りるから、全員カメラオフにし、あたかもラジオのように報告を聞く。報告に関連する質問もチャット機能を用いて行われる。報告者による解答は同様に音声のみで行う。無理解な学生の質問は得てして冗長になりがちなので、チャットに打ち込むことでより生産的な質疑応答が展開されていると思う。

    討論については、動画配信で行われるが、発言者以外はマイクオフにするよう徹底されている。ハウリングや雑音の混入を防止する点、発言者が明瞭になる点からも合理的な措置だろう。

    ゼミに関しては、対面授業と遜色のないーむしろ質疑応答は対面授業より生産的ー教育効果が達成されていると評価している。一方で、インターネットツールに詳しくない操作音痴な教員による講義は苦痛極まりない。以下詳述しよう。

    履修中止してしまったが、倒産法の講義がそれにあたる。毎授業ごとに15分の制限時間内にGoogle Formで小テストが実施される。それも、15分で説明問題が10問というかなり時間制約の厳しいテストである。Google Formで10問作成されているが、その解答欄は毎回一つ。解答も記述式(段落解答)という無能っぷりが発揮されている。1問ごとに設問を区切る機能がある(当たり前)とClassroomで学生が指摘や教示をしても、なお無視してスタイルを貫こうとする教員。

    せめて苦手にしても学生の指摘や教示をもとに「模索する姿勢」くらいは示してほしいと思う。不具合を指摘しても回答が返ってこない、修正されないことも多くうんざりしてしまったので、ついには履修中止をした(せざるを得ない)。進路の都合から、単位も高成績で修得する必要があり、インターネットツールも使いこなせない・学生対応を疎かにする教員の授業は、授業内容の難易に関わらず履修意欲を減少させる。

  2. 今後の授業方法に向けて

    後期も引き続きオンライン授業が継続されることが、極めて高い(大学当局からの公式発表はいまだない)。検査母数が増えているとはいえ、都内の感染者数は連日200人を超えており、都内中心部にキャンパスを有することからすると現状維持した方が大学としてもよいだろう。通学する学生から感染者が出れば、濃厚接触者がかなりの数に及びうること、消毒等の措置のために休講が増えれば学生にとっても不利益が生じる。ただでさえ一円も返還されない学費なのにそれに加え消毒費用の実費がかかれば学費の一律減額や返金も現実的ではなくなる(ただでさえ、学生の通信環境の整備や施設費の返還にやる気のない大学だが・・・)。

    一方で、対面授業を望む声が大きいのも理解できる。友達どおしで問題を検討する有意義さはオンライン授業で失われつつある。教員の肌身に触れた雑談は思いの外示唆に富んでいたり、教員の問題意識からその専門領域の近時の論点が見えたりすることもある。1年生は、特に大学でまともな友達もできないまま今に至る学生が相当数いるともいえる。ゼミ募集も後期本格化することからすると、2年生にどのようにゼミの告知をするか、ゼミ見学をどのようにするか検討しなければと思う。(クラスルームのやりとりをその回限定で2年生にも閲覧を許すというのは、なかなか厳しいものがあるだろう)。

    サークルには所属していないので、どのような勧誘・活動がなされているかよく分からない。1年生のサークルとの付き合い方は、最初のうちは複数入っておいて、友達を作り、肌に合わないものはやめるーというのが王道だと思う。それも今般では現実性がないのだろう。

    SAとして勤務する授業が1年生を対象とする入門講義のため、そこで関わる余地はある。だが、実際にはメールやClassroom上でのやり取りを含め皆無といってよい。(去年はSAやっててもかかわりあったんだけどなあ)。

    いずれにしても、オンライン授業を継続する公算は大きい。教育効果については教員がインターネットツールを使いこなせば十分達成できる。だが、人とのかかわりや学生の人間関係の希薄化などの問題は今後一層現実的な問題として先鋭化するだろう。学生の心理的負担を除去する方策として、双方向講義の充実化が望まれる。