代金払ったのに納車されない、「事故車」を告げずに売る中古販売業者

代金払ったのに納車されない、返金にも応じず・・・「事故車」と告げずに売りつける中古販売業者の手口

https://news.yahoo.co.jp/articles/ff2d64dc87a5d5e7e4bbd68431307987365f8396?page=2 (8月12日最終閲覧)

 

  • 岐阜市の中古車販売会社で、購入した客から「代金を支払ったのに納車されない」「実は事故車だった」など、詐欺的な被害を訴える声が多数あがっていることがわかりました。
  • 男性・「(中古車店が)『大変コンディションが良好。不都合箇所などはございません。ご安心ください』と書いてあったりとか、ナビを付けてもうちょっと…と言ったら、じゃあナビを付けて270万円にするよと」
  • 男性は納車前の不具合を不審に思い、陸運局で車の所有履歴を調べたところ、わかったのは驚きの事実でした。
  • 男性:
    「去年の登録の車だったんですが、初年度の登録の方と連絡をとることができて確認しましたら、『昨年の九州の豪雨の際、水没した車だったんだよ』と」
  • 男性は弁護士を通じて、購入をやめると通告し、契約時に支払ったおよそ270万円を直ちに返すよう何度も求めてきました。しかし、業者は返金に応じていません。

弁護士の見解として、販売業者(売主)は「事故車」である旨を購入者(買主)に通知する義務はないとする。一方で、消費者契約法4条2項本文の「消費者の不利益となる事実を・・・故意・・・によって告げなかったことにより、当該事実が存在しないとの誤認をし」それによって契約の申込み・承諾の意思表示をしたときは取り消すことができることを説明している。

消費者契約法上実体法の観点からは、買主の売買契約の取消が当然に認められる事例といえる。水没車の説明に「コンディション良好」と書いている時点で、購入の判断に関する重要な事実を偽っているし、売主もこれを認識している以上一般法(民法)の詐欺取消(96条)もできるのではないかと思った。

契約不適合責任(旧法のいう瑕疵担保責任)はあくまで売主・買主が契約当時にその瑕疵が隠れていたときの責任の所在に関する規律であるから、本件には及ばない議論である。

詐欺罪(刑246条1項)にあたるかどうかも、売主が水没車であるかどうかという契約の判断に関する重要な事実について偽っているから、「欺」く行為があるといえる。そして、この欺罔によって買主はコンディション良好な中古車として購入し、代金270万円を支払っているところ、詐欺罪は既遂に至っている。

詐欺罪の実行の着手時期は行為者が詐欺の意思で人に対して欺罔行為を開始した時点であり、既遂時期は財物(または利益)が行為者側に移転したときである。代金支払い時点で270万円の財物が売主に渡っているから既遂といえる。

買主は気の毒だと思う、名古屋地裁民事訴訟を起こしたというが、「被告は出廷していない」という。第一回口頭弁論期日に被告が出廷するケースってなかなかないのでは・・・?被告代理人でも第一回は答弁書を提出して欠席することもあるし、出廷したかどうかよりは答弁書出したかどうかが気になる。

答弁書提出されていなかったら原告の請求認容判決が第一回期日で出るはずなので、その旨の記載がないことからすると、被告は答弁書くらいは出したんだろうな(推測)

 

↓契約不適合責任に関する説明については潮見『債権各論Ⅰ』を参照してください。

 

消費者契約における規律については基本講義消費者法第4版(法セミLAW CLASSシリーズ)が明るい