ふくろうさんのホーホー日記

司法試験受験生の雑感

図書館は学知の心臓部

タイトルに込めた意味

大学図書館は、大学の付属施設ではない。高校までの学校は、教育施設であり、生徒の教育レベル・人間性を育てることを主題化したものだが、大学はそうではない。大学は、研究機関である。

だから、高校までにおまけ程度についていて、新書や小説だけを置いている図書館と大学のこれとは異なる。大学図書館は、専門書・専門雑誌を大量に収集している。公立図書館にもない蔵書を数多く取り揃えている。(法律学専門の僕からするとあまり馴染みないのだが、福沢諭吉の何かの書物の原本があるらしい、)

僕の通っている大学は一応100年以上の歴史ある大学であるから、過去の書籍・文献にもアクセスできる。

僕の図書館活用法

僕が図書館を使うのは、①大学の課題(レポート、ゼミ論)をこなすための情報収集活動、②日々の勉強(司法試験・大学院進学対策)のための文献収集、③私的な関心を埋めるための文献収集という目的が多い。

大学の課題

レポート、ゼミ論、卒論に関わらず、先行論文や文献にアクセスせずに書ける文章はない。後日、論文・レポートの書き方について記事を書くことにしたい。

基本的には、手持ち以外の基本書と判例評釈、判例解説、逐条解説、改正法解説を入手することが多い。

日々の勉強

これは、司法試験受験系の雑誌を参照することが多い。受験新報やHi Lawyerを読むことが多い。予備校界隈の近時の司法試験の問題や解説、出題趣旨に関する分析が載っている事が多く、試験対策上有用な情報を入手する重要ツールである。1冊2000円前後するため比較的高額で、在庫を置いている本屋が少ない。また、自分が求めている情報の濃さにばらつきがあることから買うという選択肢は取りにくい。だからこそ、大学図書館で必要情報を摂取することが、大事なのだ。

私的な関心を埋める

多くは、自分の関心領域(憲法・情報法・国際私法)に関連する文献や近時の判例動向に関する調査である。最近は、法学セミナーの情報法ナビゲーションやプロバイダ責任制限法の逐条解説、基本判例などの読解に注力している。

最近の図書館使用方法

以下は、僕の図書館の使い方であり、一つの参考例としてほしい。

滞在時間50分

 

【チェックした文献】

  • 山根崇邦「写真画像のリツイートと氏名表示権侵害」(法セミ・2021年3月No.794)34~39頁
  • 小島崇弘「教科書やウェブ情報のコピペはどこまで許されるのか」(法セミ・2021年3月No.794)8~12頁
  • 伊藤建「薬局解説距離制限事件判決の基準の使い方をめぐる事例分析」(法セミ・2021年3月No.794)77~81頁
  • 伊永大輔「ドラフト会議からの特定選手の除外」(ジュリスト・2021年3月No.1555)6~7頁
  • 苗村博子「種苗法の一部を改正する法律」(ジュリスト・2021年3月No.1555)84~89頁
  • 笹本哲朗、判例解説・令和2.7.21(ジュリスト・2021年3月No.1555)101頁~108頁
  • 安念潤司判例で書いてもいいんですか?』(中央ロージャーナル・6巻2号2009年)85~103頁

【チェックした理由とコメント】

山根崇邦「写真画像のリツイートと氏名表示権侵害」・笹本哲朗、判例解説

令和2年7月21日最判はインターネット記事でも盛り上がりを見せた。「リツイートが権利侵害になる」という不正確なタイトルとともに拡散され、Twitterではかなりパニックになった。リツイートは単なる情報拡散行為ではなく、自己のツイート(表現)として引用する性質を持っていると法的には評価されるため、このように権利侵害になりうる行為といえるのである。実際にRTを権利侵害とした裁判例は数多くある。

これもその一つである。ようやく学者の評釈、調査官解説が出たのでこれをもとにレポートを1本書いてみようかと思い、チェックした。

小島崇弘「教科書やウェブ情報のコピペはどこまで許されるのか」

今月号の法セミの特集は良かった。特集の時事性・連載講座の基礎・基本の徹底が法セミの特徴。コロナ禍のオンライン授業に関する著作物の利用に関する文献もあったが、一学生として気になった論文はこれ。

知財法を勉強するやる気と時間はないが、手っ取り早く即効性のある知識を入れたかったので手にとった。

伊藤建「薬局解説距離制限事件判決の基準の使い方をめぐる事例分析」

言わずもがなの我らの「たけるん」の記事、法セミに寄稿する執筆者で一番ツイッターやってると思う。

フォーカス憲法は単行本化してほしい所存

伊永大輔「ドラフト会議からの特定選手の除外」

野球ファンなら知っている「田澤ルール」について解説された論文。見開き1頁で公取委の審査に付された件について述べられている。学部講義で半期で経済法を取ったがよくわかっていない。適用法条から丁寧に解説されているので興味深いといえる。

苗村博子「種苗法の一部を改正する法律」

国会を騒がせた種苗法改正案。検察庁法改正案と並んで、昨年国会審議や社会を騒がせた法案といえよう。検察庁法改正案については憲法領域との接続もあったことから、調べる労力を振り向けられたが、種苗法はそういうわけにはいかなかった。これを読んで国会審議や法改正の問題点について見識を深められそう。

どうでもいい話だが、種苗法改正案についての解説を苗村先生という方が執筆されているのはじわる。

安念潤司判例で書いてもいいんですか?』

中央・ロージャーナルが法科大学院所蔵で学部生は立ち入れないため、わざわざ取り寄せた。「判例はカミ、学説はゴミ」という言説が登場した、受験生には有名な記事である。

まとめると

借りた本としては、会社法の令和元年改正の解説本(商事法務出版の一問一答)とプロ責法の弁護士会が出してる基本判例解説みたいなものを借りた。気が向いたら読む(それは多分読まないフラグ)。

見ていただくと分かる通り、今回は基本書については何も触れなかった。基本書はレポートを書く時に論点となる学説の違いを明らかにしたりする時に見るときが多いので。

 

トイマニを頑張って見えたこと②

  前回の記事 

fukurou3.hatenablog.com

勉強との関連性

前回は、私の3月3日時点での理論値とその課題について書いた。今回は、勉強との関連性をどのように考えるかについて、最近思ったことを書くことにしたい。

勉強でもスポーツでも、上達には①課題を発見する力と②それを克服する適切な手段を見つけること、そして、③正確性の上げ方を見つけることが欠かせないと感じた。

①課題発見力

自分がいま、何を不得意としていて、何を得意としているかを分析する。

【トイマニ】

  • 狙ったところにあたらない
  • 当たり判定を待っているため、シューター捌きがうまくならない。

【勉強】

  • 行商民訴刑訴の短答点数が20点以上取れない
  • 論文では基本判例の活用ができないため、論証の展開に問題がある
②克服のための適切な手段の設定

現時点でこれが適切かはわからない。結果が伴うブレイクスルーを経験して、初めて実証される。これはあくまで、今検討している適切であろう手段(仮)ということである。多くの方からアドバイスをいただく方法論の一つであり、次回実践しようと試みるものを含むものだ。

【トイマニ】

  • シューターの紐をまっすぐ引く
  • シューターを体の正面に持っていくことで、狙い目を意識する
  • 当たり判定問題については、数発打ち込んで次を狙いに行くトレーニングをしてみる(待ち時間が短い今だからこそできること)
  • 輪投げ裏ステ展開後の立ち回りは571Kほか高得点動画を参照する。
  • 自分のプレーと高得点動画の動きの違いを比較することでイメージを深める。

【勉強】

  • とにかく短答を回す。年度別を5年分解き、全問題・全選択肢の解答根拠を判例六法と手持ちの基本書で確認する。
  • 論文の過去問と演習書をまずは百選を見ながらでも書き上げる。課題があるのは論点発見から論証にいたる思考の整理にあるのではないか?
  • そうだとするならば、百選を見てでも書けるようになる(結局アウトプットに課題がある)のが一番
③正確性の向上

【トイマニ】

  • 火山・皿は克服しつつある。特に皿については、うまいと褒めていただいたこともある。→ミスをしない正確さのためには反復と失敗した際の原因追及をする。

【勉強】

  • 短答では単純誤答を減らす。解説を読んで知っているはずの条文・判例なのに・・・という場合は、なぜ単純誤答したかをノートに書き出す。問題文の読み違いなのか、出題指示を読み飛ばしていたのかなど。単純誤答の原因を突き止めることも、点数アップや正確性向上につながるものではないか。
  • 論文問題は書きすぎないことが重要。「時間内に解く」「完璧を目指しすぎない」ことが大事。

レーニング3つの原理・5つの原則

最近知ったトレーニング分野での原理・原則が、勉強にも同様に妥当しうるものだと考えたので紹介しておくことにしたい。

3つの原理
  • 特異性の原理:トレーニングの効果は運動要式に依存する。与えられた刺激以上の刺激を与えないと体は慣れてしまう。
  • 可逆性の原理:何かしらの変化が起きても、元の状態に戻る。
5つの原則
  • 意識性の原則:トレーニング目的を意識する。目的意識を持つことで、効果が高まる
  • 全面性の原則:全身をバランスよく鍛える。別科目別部位のトレーニングが、苦手科目の向上につながることもある?
  • 個別性の原則:個人差を踏まえた練習をする。合格体験記や高得点プレイヤーの立ち回りは属人的な性格が強い。
  • 漸進性の原則:ゆっくりと少しずつ負荷をかけていく、長い時間をかけて着実に育てた力は失われない
  • 反復性の原則:長い時間をかけて行うことで効果が高くなる。

最後に

司法試験受験界隈で言われる「完璧を求めすぎるな、合格レベルで良い」という言説と、トイマニ界隈で言われる「一つの的に固執するな、次の的を撃て」という言説には非常に近しい考え方に基づくものだと感じている。

トイマニをやってみて、多くの人との交流を持てたこと、素敵な皆さんに巡り会えたことだけでなく、何かを極めることには共通性があることに気づくことができた。

トイマニも勉強もいつかきっと頑張ればブレイクスルーがやってきて、報われるはず!!!

 

トイマニを頑張って見えたこと①

トイマニ勢との交流

世の中こんなにディズニーに行きまくっている人がいるもんだなあと思った。Twitterで知り合った人と、実際に会うというのがコロナ禍(特に年パスもない状況ということもあり)で難しかったが、最近は多くの人と交流する機会を得た。

トイマニをスポーツのように楽しむみなさんの心意気と、実力の高さに感服している。人気アトラクションでありながら、最近の人数制限の影響で非常に短い待ち時間で乗れる。

実力上位のトイマニプレイヤーに同乗して、トイマニの攻略を探ったり、逆にアドバイスを求めて同乗してもらうなどさながらスポーツである。とはいっても娯楽性の強いスポーツといったところだろう。

輪投げのように、人によって方法が異なっていたりするから、その違いを比較するのも面白さの一つだ。

そんな僕も1月時点では23万点が自己ベストであったが、2月・3月にそれぞれ1回ずつインして、上位プレイヤーに教えていただいたことで34万点まで自己ベストを更新できた。

スポーツと勉強の関連性

単にトイマニの感想をつらつらと書き記すのが、今回の記事の主題ではない。スポーツに包含されるトイマニと、勉強の関連性について少し意識を強めたことがあるから、私の僅かながらの問題提起を投げかけておくことにしたい。

40万点を目指したい

トイマニをやる上で一つの目標としているのが自己ベスト40万点超えの達成である。まずは、その目標を達成するための私なりのアプローチ法をまとめてみた。

理論値

  • 農場 39,700点
  • 火山 66,800点
  • 皿  62,100点
  • 輪投げ68,100点
  • ラスト148,900点
  • 合計 385,6000点

各ステージの自己ベストの合計は、現在の実力で獲得可能な合計スコアを示すものといえる。

現在抱えている根本的な課題は、狙った場所に当たらないということである。農場ラウンドは豚の下の柵にあたることが多い。また、当たり判定を待ってしまっていることも課題の一つだ。当たり判定を待っているとシューター捌きが遅れる原因になり、皿の裏ステ展開をワンテンポ遅らせてしまう原因となる。

点数ベースで話をすると、農場と輪投げステージの点数底上げにも課題がある。農場はおそらく上記の一般的な課題を克服すれば、自然とヒット率・得点ともに上がることが予測される

輪投げは、輪投げを成功させること・成功後の立ち回りを確立させることが求められる。成功させているときではなく、失敗しているときの点数が輪投げステージの自己ベストになってしまっている。

ラストに関してはなぜか昨日は上手く行った。裏ステを出すことができていなかったが、一発さえ当たればよく、何発も打ち込む必要はないのだと感じた。連射方法のフォームの伝授を受けたのであとは実践あるのみである。

 

皿と火山については、早く裏ステを出すこと、そしてその正確性を上げることに課題はあるが、他に大きな問題点はないだろう。

続きの記事はこちらから

fukurou3.hatenablog.com

 

2020年度を振り返る

履修した授業の感想

勝手ながら上から目線な感想を書く。履修の感想は授業スタイルや課題、成績評価方法についてコメントする。

民事訴訟

履修の感想

Meetによるリアルタイム授業。当初は音声ラグや雑音が酷く聞き取りにくかったり、教員の不慣れさもあってなかなか苦しい授業だった(これはある程度仕方ない)。毎回1000字~2000字程度の授業レポートに加え、3000字程度の期末レポートもあったことからなかなかハードな講義だった。メールで質問すると、爆速で丁寧なお返事をいただけたので、不明点はそのようにして解消した。

使用教材の適切さ

使用教材は上原=池田=山本『民事訴訟法』(有斐閣Sシリーズ)

 訴訟物理論をめぐる学説(新訴訟物理論)と実務(旧訴訟物理論)についての記述や、要件事実についての説明、弁論主義・処分権主義の基礎的な概念の解説が薄く、初学者の1冊目として適切なのかは疑問。

ADRや近年の司法制度改革、法服が黒色とされている理由などのコラムなどは充実している。証明責任の分配の解説が一番わかり易い。

複雑訴訟や手形訴訟、督促手続などの解説は条文に沿った解説に終始しており、条文傍用書といった性格が強い。

これよりは、藤田広美『講義民事訴訟』を挟んだほうが(むしろこの一冊で良いはず)、読みやすい。Sシリーズはどちらかというと、ざっと復習するときに用いる方が捗る。携行性高いし。

 

一応、藤田『講義』も貼っておきます。

 

憲法ゼミナール

履修の感想

判例百選をベースに報告と討議を重ねるのがこのゼミの主題だった。

前期は1人1事件ずつ報告するスタイル、後期は関連する時事事件や近時の憲法判例についてグループで扱った。指導教員のご玉稿の百選記事をグループで担当して報告した。指導教員が執筆した箇所をいち学生が報告担当となるのはなかなか忍びない思いだったが、グループで取り組んだだけのことはあり、充実したものになった。因みに担当した判例は、猿払判決と「忘れられる権利」決定である。また、香川県ゲーム条例事件についても報告した。

使用教材の適切さ

人権法が主ということもあって、同判例百選Ⅱについては教材指定されていなかった(まあⅡも受験生として持っているのですがね)。

憲法の講義をとると、『新・判例ハンドブック憲法』を指定する教員がいるが、あれは良くない。簡潔さとは名ばかりで、説明が薄く事案と結論を暗記する学生が増える。思考過程とか論理を重視せよ、と言う割には判例用教材を正しく指定できていない教員なんだなという目で、僕は見ます(有斐閣さん、ごめんなさい)。

『新・判例ハンドブック憲法』は憲法の入門用の判例教材にとどめるべきで、2年次以降開講科目の憲法の教材としては不適格ですということが言いたい。

親族法・相続法

履修の感想

音声ファイルを聞きながらレジュメを追うというスタイルの講義。レポートを3本こなすと単位がくるということで、僕は指定教科書を買わずにレポートを出すのみの単位獲得を目指した。

指定教科書はなんだったか忘れたが、とりあえず窪田さんの『家族法』を図書館で借りて読んでいる。厚い割には説明的な文体の解説で読みやすい。これはかなり好みが分かれるはず。レポートのテーマは近年の家族法分野改正に関わる事柄で、懲戒権規定の見直しや自筆証書遺言の押印要件見直しの是非等があった。改正議論を部会資料や国会議事録等を参照しながら書いたこともあって、リーガル・リサーチスキル全体が伸びた(気がする)。

使用教材の適切さ

これは指定教科書ではありません。窪田さんの『家族法』です。第四版は改正対応しているので、この箇所は必読。あとは、潮見先生の改正の概要(青い本)が良い。潮見さんは何を読んでも解説が合う。

やっぱり法律専門書は、誰の解説が肌に合うかで決まる。(形式的な意味における)共著書は装丁や構成に差が出るが、やっぱり単著は執筆者の色が出るので個性的でおもしろい。

国際私法

履修の感想

動画を見て翌週までに小テストをこなすスタイルで期末試験アリという授業スタイルだった。マイクの音が小さく、音量MAXにしてやっと聞こえるレベルな序盤だったが、指摘をしたら試行錯誤してくださった。

オンライン授業で教員側も不慣れだっただろうに最大限善処してくださったのは本当に有り難い。ただの学部生の意見や提案にも耳を貸してくださった。この場を借りてお礼したい。

司法試験選択科目候補筆頭ということもあり、まあまあ力を注いだ。国際私法の基本概念(法性決定→連結点確定→準拠法確定)や、国際裁判管轄・準拠法指定・執行の各フェーズの意味を理解できたとは思う。

連結点政策の実質的な意義にまで検討した講義ということもあり、なかなかレベルが高かった。やりがいのあった講義の一つ。

使用教材の適切さ

国際私法はそもそも基本書の数が少ない、司法試験選択科目受験者数の母数も小さいことから、不安が尽きない科目ではないか。

コラムの充実さや叙述の的確さ、学説へのそれぞれの検討も丁寧にされている。国際私法領域で学説が煮詰まっていない分野もあり、この点はこの本の問題と言うより、国際私法学説全体の問題ということで了解しよう。そのまま司法試験戦線に繰り出せる基本書だと思うので、良い教材を指定してくださったと考えている。

判例百選も指定されていた。「解説」の記述を一部持ち出したり、先生のご玉稿をもとに授業を進めていたりした。道垣内論文なども紹介されていたので興味深かった。

会社法特論

履修の感想

まさかの共有ドキュメントで質疑応答するスタイルの授業(新鮮)。予習課題、授業での応答、レポート2回、短答試験3回?のなかなかハードな授業だったが、取ってよかった。2020年度授業オブザイヤーはと聞かれたら確実に会社法特論という。

ロー所属教員の良いところは判例と理論の説明を丁寧にしてくれること、当事者にひきつけた検討に発展させてくれるところだ。学説を紹介する際、誰の見解なのか教えてくれれば嬉しかった(これは具申するべきだった)。

使用教材の適切さ

やっぱり百選に勝る判例教材はなし。

経済法

履修の感想

前期のみ履修。レジ袋有料化が実施されたが、これを無料配布するという地元スーパー同士の協議が談合にあたるかどうかを検討させる、期末課題だった。公取委の相談事例では談合に該当しないという結論だったが、事情評価と射程を意識して談合に該当する結論を採った。説得的と評価されたのか、特異性あるレポートと評価されたのか不分明だが、Sだったので良しとしよう。

使用教材の適切さ

同じアルマから「ベーシック経済法」があるが、これよりも本書のほうが専門性が高いそう。というわりには全体として読みやすかった。アルマは奇をてらった構成がとられることがあるが、本書はオーソドックスな構成を採っていた。強いていうならば、独占・寡占について冒頭で軽く触れてから本題に入ってほしかった。

債権各論

履修の感想

一番単位のための単位だった。論評の価値なし。質問対応も一切受けてくれなかった。小テストも設問不適当なものばかり、解答が一義的に定まらないものばかり。学生とのやりとりもなく、一番履修を後悔した科目。

民事救済法

履修の感想

民事訴訟法が通年科目に対して、本講義は半期の授業ということで、民訴の内容を一気読みするスタイルだった。担当教員は民訴法と同じということもあり、やりやすかった。

刑事訴訟法

履修の感想

PDFファイルを読むだけ、期末に厳格な証明に関するレポートを一本書いて終了。

 

令和元年改正・会社法の概要(株主総会に関する規律の見直し)

 

概説

会社法の一部を改正する法律(令和元年12月4日成立・令和元年法律第70号)は、令和3年3月1日において部分的ではあるが施行されることとなった。本稿は、その概要をまとめておくものである。

今回の改正分野は多岐にわたる。本稿では、Ⅰ株主総会に関する規律、Ⅱ取締役等に関する規律の見直し、Ⅲ社債の管理等に関する規律の見直しに大別して紹介することとしたい。

株主総会に関する規律の見直し

この分野の改正は、デジタル・トランス・フォーメーション【DX】を意識したものといえる(詳しくは、以下の記事を参照。)

www.nikkei.com

 株主総会資料の電子提供制度の創設

改正点について

会社法における「株主総会」の捉え方は、文脈によって異なる。一つは、会社の意思決定機関という文脈であり、もう一つはこの意思決定を行う会議体としての文脈である。

従来の機関の意味としての株主総会は、株主が特定の場所に一同に会する物理的会合が前提とされてきた。物理的会合としての株主総会開催にあたっては、以下の招集手続がとられてきた次第である。

それは、株主総会の日時・場所、議題などを取締役会で決定(298条1項)、これらを記載した通知書面を総会開催の2週間前までに株主に発送することを原則とするものである(299条)。

この招集通知は、株主が総会に出席するかどうかの判断資料となるため、株式会社は招集通知に記載されていない事項について総会で決議することができない(309条5項)。すなわち、招集通知は株主の総会出席の判断資料にすぎず、総会に出席し討議を深めることを会社法は予定しているものといえる。

だが、株主の多い株式会社の総会において討議を深めることは現実的ではない。あくまで一例ではあるが、(株)オリエンタルランド株主通信によると同社の株主数は19万8087名である。

そこで、株主総会の意思形成機能のうち重要な議決権行使のみを書面によって完結させる制度を用意している。株主数1000人以上の株式会社は原則として、この書面による議決権行使()を採用しなければならない。

書面による議決権行使を採用した株式会社は、招集通知とともに議決権の行使について参考となる情報を記載した書類(株主総会参考資料)の交付もしなければならない(301条1項、302条1項)。株主は、招集通知とこの株主総会参考資料をもとに出席の当否と議案への賛否の態度を決めることが想定されている。

本改正では、株主総会参考資料を電子ファイル形式でウェブサイトに掲載することで、書面による送付を省略することが可能となった。

改正条文(新設)

第325条の2 (電子提供措置をとる旨の定款の定め)

株式会社は、取締役が株主総会(種類株主総会を含む。)の招集の手続を行うときは、次に掲げる資料(以下この款において「株主総会参考書類等」という。)の内容である情報について、電子提供措置(電磁的方法により株主(種類株主総会を招集する場合にあっては、ある種類の株主に限る。)が情報の提供を受けることができる状態に置く措置であって、法務省令で定めるものをいう。以下この款、第九百十一条第三項第十二号の二及び第九百七十六条第十九号において同じ。)をとる旨を定款で定めることができる。この場合において、その定款には、電子提供措置をとる旨を定めれば足りる。

二 議決権行使書面

三 第四百三十七条の計算書類及び事業報告

四 第四百四十四条第六項の連結計算書類

第325条の3 電子提供措置をとる旨の定款の定めがある株式会社の取締役は、第二百九十九条第二項各号に掲げる場合には、株主総会の日の三週間前の日又は同条第一項の通知を発した日のいずれか早い日(以下この款において「電子提供措置開始日」という。)から株主総会の日後三箇月を経過する日までの間(以下この款において「電子提供措置期間」という。)、次に掲げる事項に係る情報について継続して電子提供措置をとらなければならない。

三 第三百二条第一項に規定する場合には、株主総会参考書類に記載すべき事項

四 第三百五条第一項の規定による請求があった場合には、同項の議案の要領

五 株式会社が取締役会設置会社である場合において、取締役が定時株主総会を招集するときは、第四百三十七条の計算書類及び事業報告に記載され、又は記録された事項

六 株式会社が会計監査人設置会社(取締役会設置会社に限る。)である場合において、取締役が定時株主総会を招集するときは、第四百四十四条第六項の連結計算書類に記載され、又は記録された事項

七 前各号に掲げる事項を修正したときは、その旨及び修正前の事項

2 前項の規定にかかわらず、取締役が第二百九十九条第一項の通知に際して株主に対し議決権行使書面を交付するときは、議決権行使書面に記載すべき事項に係る情報については、前項の規定により電子提供措置をとることを要しない。

3 第一項の規定にかかわらず、金融商品取引法第二十四条第一項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書内閣総理大臣に提出しなければならない株式会社が、電子提供措置開始日までに第一項各号に掲げる事項(定時株主総会に係るものに限り、議決権行使書面に記載すべき事項を除く。)を記載した有価証券報告書(添付書類及びこれらの訂正報告書を含む。)の提出の手続を同法第二十七条の三十の二に規定する開示用電子情報処理組織(以下この款において単に「開示用電子情報処理組織」という。)を使用して行う場合には、当該事項に係る情報については、同項の規定により電子提供措置をとることを要しない。

※「電子提供装置」とは、インターネットに接続された自動公衆送信装置を使用して株主が情報の提供を受けることができる状態に置く装置のことである。

株主総会の招集の通知等の特則)

第325条の4 前条第一項の規定により電子提供措置をとる場合における第二百九十九条第一項の規定の適用については、同項中「二週間(前条第一項第三号又は第四号に掲げる事項を定めたときを除き、公開会社でない株式会社にあっては、一週間(当該株式会社が取締役会設置会社以外の株式会社である場合において、これを下回る期間を定款で定めた場合にあっては、その期間))」とあるのは、「二週間」とする。

2 第二百九十九条第四項の規定にかかわらず、前条第一項の規定により電子提供措置をとる場合には、第二百九十九条第二項又は第三項の通知には、第二百九十八条第一項第五号に掲げる事項を記載し、又は記録することを要しない。この場合において、当該通知には、同項第一号から第四号までに掲げる事項のほか、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。

一 電子提供措置をとっているときは、その旨

二 前条第三項の手続を開示用電子情報処理組織を使用して行ったときは、その旨

三 前二号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項

3 第三百一条第一項、第三百二条第一項、第四百三十七条及び第四百四十四条第六項の規定にかかわらず、電子提供措置をとる旨の定款の定めがある株式会社においては、取締役は、第二百九十九条第一項の通知に際して、株主に対し、株主総会参考書類等を交付し、又は提供することを要しない。

4 電子提供措置をとる旨の定款の定めがある株式会社における第三百五条第一項の規定の適用については、同項中「その通知に記載し、又は記録する」とあるのは、「当該議案の要領について第三百二十五条の二に規定する電子提供措置をとる」とする。

 

(書面交付請求)

第325条の5 電子提供措置をとる旨の定款の定めがある株式会社の株主(第二百九十九条第三項(第三百二十五条において準用する場合を含む。)の承諾をした株主を除く。)は、株式会社に対し、第三百二十五条の三第一項各号(第三百二十五条の七において準用する場合を含む。)に掲げる事項(以下この条において「電子提供措置事項」という。)を記載した書面の交付を請求することができる。

2 取締役は、第三百二十五条の三第一項の規定により電子提供措置をとる場合には、第二百九十九条第一項の通知に際して、前項の規定による請求(以下この条において「書面交付請求」という。)をした株主(当該株主総会において議決権を行使することができる者を定めるための基準日(第百二十四条第一項に規定する基準日をいう。)を定めた場合にあっては、当該基準日までに書面交付請求をした者に限る。)に対し、当該株主総会に係る電子提供措置事項を記載した書面を交付しなければならない。

3 株式会社は、電子提供措置事項のうち法務省令で定めるものの全部又は一部については、前項の規定により交付する書面に記載することを要しない旨を定款で定めることができる。

4 書面交付請求をした株主がある場合において、その書面交付請求の日(当該株主が次項ただし書の規定により異議を述べた場合にあっては、当該異議を述べた日)から一年を経過したときは、株式会社は、当該株主に対し、第二項の規定による書面の交付を終了する旨を通知し、かつ、これに異議のある場合には一定の期間(以下この条において「催告期間」という。)内に異議を述べるべき旨を催告することができる。ただし、催告期間は、一箇月を下ることができない。

5 前項の規定による通知及び催告を受けた株主がした書面交付請求は、催告期間を経過した時にその効力を失う。ただし、当該株主が催告期間内に異議を述べたときは、この限りでない。

 

第325条の6 第三百二十五条の三第一項の規定にかかわらず、電子提供措置期間中に電子提供措置の中断(株主が提供を受けることができる状態に置かれた情報がその状態に置かれないこととなったこと又は当該情報がその状態に置かれた後改変されたこと(同項第七号の規定により修正されたことを除く。)をいう。以下この条において同じ。)が生じた場合において、次の各号のいずれにも該当するときは、その電子提供措置の中断は、当該電子提供措置の効力に影響を及ぼさない。

一 電子提供措置の中断が生ずることにつき株式会社が善意でかつ重大な過失がないこと又は株式会社に正当な事由があること。

二 電子提供措置の中断が生じた時間の合計が電子提供措置期間の十分の一を超えないこと。

三 電子提供措置開始日から株主総会の日までの期間中に電子提供措置の中断が生じたときは、当該期間中に電子提供措置の中断が生じた時間の合計が当該期間の十分の一を超えないこと。

四 株式会社が電子提供措置の中断が生じたことを知った後速やかにその旨、電子提供措置の中断が生じた時間及び電子提供措置の中断の内容について当該電子提供措置に付して電子提供措置をとったこと。

改正による変化
  • 従前は株主の人数分の紙媒体を印字するコストがかかったが、これを削減できる。OLCならば19万人分の招集通知+株主総会参考資料の印刷の煩雑さから免れることができる。
  • 会社の負担軽減により資料の提供を前倒しすることができる。これにより株主の熟慮が期待できる、郵送する必要がなくなることで離隔地(海外など)の投資家によるマネー流入が期待できる。

株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置の整備

改正点について

株主が同一の株主総会において提出することができる議案の数を10までとする上限を新たに設けることとされた。

その経緯としては、部会資料3によると以下の説明がなされている。

「昭和56年商法改正により導入された株主提案権の制度の趣旨は,株主の疎外感を払拭し,経営者と株主との間又は株主相互間のコミュニケーションを良くして,開かれた株式会社を実現しようとするものである。しかし,近時,株式会社を困惑させる目的で議案が提案されたり,一人の株主により膨大な数の議案が提案されるなど,株主提案権が濫用的に行使される事例が見られる。株主提案権が濫用的に行使されることにより,株主総会における審議の時間等が無駄に割かれ,株主総会の意思決定機関としての機能が害されることや,株式会社における検討や招集通知の印刷等に要するコストが増加するということが弊害として指摘されている。
一定の場合には株主提案権の行使が権利濫用に該当することを認めた裁判例(東京高判平成27年5月19日金判1473号26頁)も見られるが,どのような場合に株主提案権の行使が権利濫用に該当すると認められるかは必ずしも明確でなく,実務上,株主提案権が行使された場合には,株式会社が株主提案権の行使を権利濫用に該当すると判断することは難しいと指摘されている。
そこで,株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置として,株主が提案することができる議案の数を制限することや,株主による不適切な内容の議案の提案を制限することが考えられる。 」

改正条文

第305条

1項~3項 略 

4項 取締役会設置会社の株主が第1項の規定による請求をする場合において、当該株主が提出しようとする議案の数が10を超えるときは、前三3項の規定は、10を超える数に相当することとなる数の議案については、適用しない。この場合において、当該株主が提出しようとする次の各号に掲げる議案の数については、当該各号に定めるところによる。

一号~四号 略

5項 前項前段の10を超える数に相当することとなる議案は、取締役がこれを定める。ただし、第1項の規定による請求をした株主が当該請求と併せて当該株主が提出しようとする2以上の議案の全部又は一部につき議案相互間の優先順位を定めている場合には、取締役は当該優先順位に従い、これを定めるものとする。

改正による変化
  • 数による制限がかけられることにより、濫用的な株主提案権行使が抑制され、本来の制度趣旨に適合したものとなると期待できる。

改正・新型インフルエンザ特別措置法①

はじめに

2021年改正・特措法改正の概要

新型インフルエンザ特措法(以下「法」)の改正の概要は以下の通り

  1. 特定の地域において、国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがあるまん延を防止するため、「まん延防止等重点措置」を創設
  2. 緊急事態宣言中に開設できることとされている「臨時の医療施設」について、政府対策本部が設置された段階から開設できることとする。
  3. 緊急辞退宣言中の宣言の施設制限等の要請に応じない場合の命令、命令に違反した場合(30万円以下)の過料を規定する。

改正の趣旨

「現下の新型コロナウイルス感染症に係る対策の推進を図るため、「まん延防止等重点措置」を創設し、営業時間の要請、要請に応じない場合の命令等を規定し、併せて事業者及び地方公共団体等に対する支援を規定するとともに、新型コロナウイルス感染症感染症法において新型インフルエンザ等感染症と位置づけ、所要の措置を講ずることができることとし、併せて宿泊療養及び自宅療養の要請について法律上の根拠を設ける等の措置を講ずる。」

改正箇所について

まん延防止等重点措置

第三章の二が新設される形で改正が行われた。

 第31条の4

政府対策本部長は、新型インフルエンザ等(国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあるものとして政令で定める要件に該当するものに限る。以下この章及び次章において同じ。)が国内で発生し、特定の区域において、国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある当該区域における新型インフルエンザ等のまん延を防止するため、新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置を集中的に実施する必要があるものとして政令で定める要件に該当する事態が発生したと認めるときは、当該事態が発生した旨及び次に掲げる事項を公示するものとする。

 新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置を実施すべき期間
 新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置を実施すべき区域
 当該事態の概要

 なお、同条2項により、同条1項1号の期間は「六月を超えてはならない」と定められている。

第31条の6 都道府県知事は、第三十一条の四第一項に規定する事態において、国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある同項第二号に掲げる区域(以下この条において「重点区域」という。)における新型インフルエンザ等のまん延を防止するため必要があると認めるときは、新型インフルエンザ等の潜伏期間及び治癒までの期間並びに発生の状況を考慮して当該都道府県知事が定める期間及び区域において、新型インフルエンザ等の発生の状況についての政令で定める事項を勘案して措置を講ずる必要があると認める業態に属する事業を行う者に対し、営業時間の変更その他国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある重点区域における新型インフルエンザ等のまん延を防止するために必要な措置として政令で定める措置を講ずるよう要請することができる。
 都道府県知事は、第三十一条の四第一項に規定する事態において、当該都道府県の住民に対し、前項の当該都道府県知事が定める期間及び区域において同項の規定による要請に係る営業時間以外の時間に当該業態に属する事業が行われている場所にみだりに出入りしないことその他の新型インフルエンザ等の感染の防止に必要な協力を要請することができる。
 第一項の規定による要請を受けた者が正当な理由がないのに当該要請に応じないときは、都道府県知事は、国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある重点区域における新型インフルエンザ等のまん延を防止するため特に必要があると認めるときに限り、当該者に対し、当該要請に係る措置を講ずべきことを命ずることができる。
 都道府県知事は、第一項若しくは第二項の規定による要請又は前項の規定による命令を行う必要があるか否かを判断するに当たっては、あらかじめ、感染症に関する専門的な知識を有する者その他の学識経験者の意見を聴かなければならない。
 都道府県知事は、第一項の規定による要請又は第三項の規定による命令をしたときは、その旨を公表することができる。

緊急事態宣言との異同

いわばグレーゾーンとして「まん延防止等重点措置」を盛り込むことで、グラデーションを持たせている。

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過料とは何か

過料は、行政が実効性を担保するための仕組みとしてよく利用されている。行政上の秩序罰は刑法上の刑罰ではなく、行政上の義務違反に対して制裁として過料という金銭的負担を科すものである。

この点については、中原茂樹『基本行政法(第3版)』が詳しいので、こちらをご参照ください。

こちらは好みがでますが、大橋洋一行政法Ⅰ(第4版)』もおすすめです。

行政上の秩序罰は、届出や通知などの義務に違反した場合のように、軽微な義務違反に対する制裁である。過料には、法律に基づくものと、条例・規則に基づくものがある。

同改正に関する私見等については、後日追記したい。

インターネット上の誹謗中傷問題

誹謗中傷問題の民事責任

これら情報法について概説された著名な専門書として、

曽我部真裕・林秀弥・栗田昌裕『情報法概説(第2版)』(弘文堂、2019年)がある。

発信者情報開示請求とプロバイダ責任制限法

プロバイダ責任制限法は、プロバイダ(特定電気通信)における情報の流通によって権利の侵害があった場合について、プロバイダ事業者の損害賠償責任の制限と発信者情報の開示請求権の規律について定めた法律です。

プロバイダの種類

ここでいうプロバイダには2種類のものがあります。まず、①ホスティングサービスプロバイダ(HSP)は、インターネットに接続されたサーバを運営し、その機能を顧客に利用させる役務(ホスティングサービス)を提供する者をいいます。具体例としては、レンタルサーバ事業者(ライブドア)、ブログサービス事業者(アメーバ、はてなブログ)、SNS事業者(Twitter、LINE)があたります。次に、②コンテンツプロバイダ(CP、CSP)があります。これは、デジタル化された情報を提供する者をいうと定義されており、インターネット接続事業者がポータルサイトを運営し、サイト上でニュースや娯楽記事を提供していれば、これらの情報との関係ではコンテンツプロバイダにあたるとされます。Yahooやmsnなどの検索エンジンを運営している会社がこれにあたります。さらに、③アクセスプロバイダ(経由プロバイダ、ISP)は顧客に対してインターネット接続サービスを提供するものと定義されています。これは、携帯電話回線や自宅のインターネット回線サービスを提供する会社がこれにあたります。

プロバイダ責任法の理念

プロバイダは、発信者に対して表現行為をするプラットフォーマーとしての地位にあります。そのため、プロバイダが安易に発信者の投稿を削除する事態となれば、プロバイダは発信者側から債務不履行に基づく損害賠償請求をされる可能性があります。そのため、プロバイダ側としては投稿の削除に消極的になるわけなのです。

一方で、誹謗中傷などの名誉毀損事案・個人情報が晒されるプライバシー侵害事案が放置されることとなれば、無秩序なインターネット空間になる危険があります。

ホスティングサービスプロバイダは、侵害情報を削除しなければ権利者から、非侵害情報を削除すれば発信者からそれぞれ損害賠償責任を追及されうるおそれがあるといえるのです。このような判断は専門家であっても困難であり、事業者の自主的対応を促進するためにはどのような行為規範に従えば法的責任を問われないか明確にしておく必要があります。

そこで、(1)送信防止措置(要は削除)を講じなかったために損害賠償責任を負いうる場合と(2)送信防止措置を講じても損害賠償責任を追わない場合をそれぞれ規定しているのです*1

不作為による損害賠償責任の制限

 第3条

1 特定電気通信による情報の流通により他人の権利が侵害されたときは、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(以下この項において「関係役務提供者」という。)は、これによって生じた損害については、権利を侵害した情報の不特定の者に対する送信を防止する措置を講ずることが技術的に可能な場合であって、次の各号のいずれかに該当するときでなければ、賠償の責めに任じない。ただし、当該関係役務提供者が当該権利を侵害した情報の発信者である場合は、この限りでない。

 当該関係役務提供者が当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知っていたとき。
 当該関係役務提供者が、当該特定電気通信による情報の流通を知っていた場合であって、当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき。

 この条文は、プロバイダが侵害情報の送信防止措置を講じなかったことに関し、これによる損害を被った権利者との関係で損害賠償責任を追及されうることについて規定しています。

「送信防止措置を講じることが技術的に可能」(柱書)とは、通常の技術力のあるプロバイダ等にとって、社会通念上、必要な限度において送信防止措置を講じることが合理的に期待できることを指すとされています。

1号・2号はプロバイダ側の認識が要件となっており、第一に侵害情報の流通そのものを認識している必要があります。これについて認識がなければ、プロバイダ側に過失がなく、損害賠償責任も肯定されないこととなります。

作為による損害賠償責任の制限

第3条2項

特定電気通信役務提供者は、特定電気通信による情報の送信を防止する措置を講じた場合において、当該措置により送信を防止された情報の発信者に生じた損害については、当該措置が当該情報の不特定の者に対する送信を防止するために必要な限度において行われたものである場合であって、次の各号のいずれかに該当するときは、賠償の責めに任じない。
 当該特定電気通信役務提供者が当該特定電気通信による情報の流通によって他人の権利が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由があったとき。
 特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者から、当該権利を侵害したとする情報(以下この号及び第四条において「侵害情報」という。)、侵害されたとする権利及び権利が侵害されたとする理由(以下この号において「侵害情報等」という。)を示して当該特定電気通信役務提供者に対し侵害情報の送信を防止する措置(以下この号において「送信防止措置」という。)を講ずるよう申出があった場合に、当該特定電気通信役務提供者が、当該侵害情報の発信者に対し当該侵害情報等を示して当該送信防止措置を講ずることに同意するかどうかを照会した場合において、当該発信者が当該照会を受けた日から七日を経過しても当該発信者から当該送信防止措置を講ずることに同意しない旨の申出がなかったとき。

 この条文の趣旨は、プロバイダ等が、送信防止措置を講じたことに関し、発信者との関係で損害賠償責任を負わない場合について規定したものです(作為責任の制限規定)。プロバイダは、上述のように非侵害情報までをも削除すれば、契約上の義務違反を根拠に損害賠償請求を追及されうるため、本項は作為責任を制限することで、プロバイダ等が損害賠償責任の追及を恐れて過度に送信防止措置を躊躇することのないようにする意義があります。

ここまで説明した、プロバイダの責任制限規定は発信者と請求者の板挟みにあるプロバイダの地位の特殊性、送信防止措置をめぐるプロバイダの負担除去という法の発想を端的に表わしているといえます。

匿名表現に関する法的紛争解決フロー

インターネット空間における匿名表現に関する法的紛争は、以下の裁判手続きを要します。

まず、①権利を侵害する匿名表現の発信者情報を開示をプロバイダ側に請求します(発信者情報開示請求権、法4条)。次に、プロバイダ側から開示された発信者情報をもとに、発信者本人に対して損害賠償責任を追及します。

このように、発信者情報開示請求をしなければならない理由は、現行訴訟法において匿名訴訟が認められていないからです。被告が特定されていない段階での出訴は、訴訟経済に反するといえるからでしょう。

発信者情報開示請求権

第4条

特定電気通信による情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者は、次の各号のいずれにも該当するときに限り、当該特定電気通信の用に供される特定電気通信設備を用いる特定電気通信役務提供者(以下「開示関係役務提供者」という。)に対し、当該開示関係役務提供者が保有する当該権利の侵害に係る発信者情報(氏名、住所その他の侵害情報の発信者の特定に資する情報であって総務省令で定めるものをいう。以下同じ。)の開示を請求することができる。
 侵害情報の流通によって当該開示の請求をする者の権利が侵害されたことが明らかであるとき。
 当該発信者情報が当該開示の請求をする者の損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他発信者情報の開示を受けるべき正当な理由があるとき。
 開示関係役務提供者は、前項の規定による開示の請求を受けたときは、当該開示の請求に係る侵害情報の発信者と連絡することができない場合その他特別の事情がある場合を除き、開示するかどうかについて当該発信者の意見を聴かなければならない。
 第一項の規定により発信者情報の開示を受けた者は、当該発信者情報をみだりに用いて、不当に当該発信者の名誉又は生活の平穏を害する行為をしてはならない。
 開示関係役務提供者は、第一項の規定による開示の請求に応じないことにより当該開示の請求をした者に生じた損害については、故意又は重大な過失がある場合でなければ、賠償の責めに任じない。ただし、当該開示関係役務提供者が当該開示の請求に係る侵害情報の発信者である場合は、この限りでない。

権利侵害情報が匿名で書き込まれた際、被害者(権利侵害を主張する者)が、被害回復のために当該匿名表現者(発信者)を特定し、損害賠償請求等を行うことができるようにするのが本条の意義です。

4条1項1号「権利が侵害されたことが明らか」であるときとは、不法行為等の成立を阻却する事由の存在をうかがわせる事情が存在しないことをも含む趣旨と解釈されています。例えば名誉毀損の主張に対して真実性の抗弁が主張され、著作権侵害の主張に対して権利制限規定の適用が主張されるなど、発信者が一応の根拠を示して開示に反対しているときは、権利侵害が明白と認められる場合に限って、本項が適用されるのです。

2号の「発信者情報の開示を受けるべき正当な理由」とは、開示請求者が発信者情報の開示を受けるべき合理的必要性が肯認されることをいいます。発信者に対して民事責任を追求する目的などが典型例として挙げられます。

判例

侮辱的表現を含むものであったとしても,それが具体的事実を摘示して相手方の社会的評価を低下させるものではなく,人が自分自身の人格的価値について有する主観的な評価である名誉感情を侵害するにとどまる場合,直ちに法的保護に値するような人格的利益の侵害となるものではなく,それが社会通念上許される限度を超える侮辱行為であると認められる場合に初めて人格的利益の侵害と認められ得るにすぎない(最高裁平成22年4月13日大三小法廷判決)*2

この判決の要旨は、侵害情報の発信者についての情報開示請求に応じないプロバイダ(開示関係役務提供者)が、被害者(開示請求者)に対し不法行為に基づく損害賠償責任を負うのは、プロバイダが、被害者による開示請求がプロバイダ責任制限法4条1項所定の要件すべてを満たすことを認識しているとき、又は要件すべてを満たすことが一見明白であり、かつ、その旨認識することができなかったことにつき重大な過失があるときのみであるということ。

そして、プロバイダ(開示関係役務提供者)が、インターネット上の掲示板の書き込みにより名誉毀損を受けたと主張する被害者(開示請求者)からの発信者情報の開示請求に応じなかった場合であっても、書き込みの文言それ自体が、具体的事実を摘示して被害者の社会的評価を低下させるものではなく、また、侮辱的な表現はその書き込み中の一語のみであり、特段の根拠を示さず、意見ないし感想として述べられているなど、社会通念上許される限度を超える侮辱行為であることが一見明白であるということはできず、権利侵害が明白か否かの判断が容易ではないときには、プロバイダにプロバイダ責任制限法4条1項の重大な過失があったということはできないということが示されています。

*1:この(2)のように法的の行為規範に従えば免責されるという規定の方式をセーフハーバー規定といいます。

*2:本判決の評釈については、中村さとみ「判解」法曹時報65巻4号190頁所収、町村泰貴プロバイダ責任制限法の『特定電気通信役務提供者』とその責任」メディア判例百選第2版所収、和田真一「判解」民商法雑誌143巻4=5号461頁所収、前田雅英「ネット社会と名誉毀損<警察官のための刑事基本判例講座9>」警察学論集63巻6号144頁所収、池田秀敏「発信者情報開示請求に応じなかったプロバイダーの責任」信州法学21号147頁所収等をご参照ください。