ロー進学希望・予備試験受験勢の自主ゼミ
自主ゼミとは
これは、予備試験・司法試験を突破し、法曹を目指す学生同士で組む自主的な勉強サークルである。メリットとしては、定期的に開催することによってペースメーカーの役割を発生できること、仲間意識・知識のシナジーを得ることができることにある。
一方で、時間や目的を明確にしなければただのおしゃべりタイムになってしまうこともあるから、そのあたりのメリハリは欠かせない。また、授業の空きコマなどに実施することなどを考えると、一コマ90分で実施するとよい。空き教室の手配なども考えるとこの時間枠で実施したほうが何かと都合が良いのも事実だ。
具体的には
自主ゼミの目的設定
私の経験からすると、以下の2つのゼミはかなり効率がよかった。
短答演習ゼミ
司法試験の短答は、本試験では足切り・予備試験では第一関門としてやってくる。避けては通れない道である。
そこで、過去問を年度別でゼミ中に解く→解答の根拠について話し合う→法務省掲載の答えを元に採点することを内容とするゼミを行った。ここでの目的は、根拠に基づく短答の解答を増やすことにある。点数は二の次である。
そのため、実施する過去問はお互いに知らせあっておき、ゼミ当日までに自分で演習を重ねておく。当日はいかに根拠を説明できるかに念頭を置いたパフォーマンスを意識する。
事前に予習をしていることを前提にすると、本番の試験と同じ時間で解く必要はない。
憲法・刑法は各50分だが、30分で良い。
民法は75分だが45分で良い。
商法・行政法・民訴・刑訴はそれぞれ30分だが、2科目セットで30分換算で良いだろう。(ちなみに、司法試験本試験にあたっても、下四法の短答演習は条文・判例知識の復習に優良な素材といえると考えるため、仮に予備試験合格を目標としなくとも実施するべきであると考える。)
解答の根拠の議論タイムは演習と同様の時間で実施すれば良い。すると、民法は90分、それ以外の科目は60分で演習+議論が終わる。
民法以外については、その後採点・振り返りを行える余力があった。民法に関しては、時間がある日は一緒に法務省サイトを確認して採点を行ったが、そうでない日は各自採点とし次の授業に向かうなどした。
これを週2回実施し、1ヶ月で2年分の過去問に触れることとなる。司法試験は平成18年から現行制度となっていることを考えると、7ヶ月で過去問を1周できる計算だ。
(ちなみに下四法が本試験で問われていた時代であっても、予備試験を素材とした。)
長期休暇は比較的時間を取りやすい傾向にあるから、その期間に短答訓練合宿ゼミと名付けて1日2回分やるなどした(実際には宿泊を伴うものではないので、合宿といえるかどうかは微妙だが・・・)。
論文ゼミ
論文は事前に自身で演習を済ませておき、答案を見せ合う→コメントをし合うこと、採点実感・出題趣旨から何をどの程度論じるべきかを考えるゼミが良い。
単に、論証を整理するだけではなく、どのような論法を提示すると結論がどちらに傾くか、事実関係から何がどのような結論と親和的かを意識した議論をした。
短答ゼミよりも、論文ゼミは自分と実力が近い人とやることが望ましい。明らかな実力差があると、実力の高い者が至らない者に一方的に教える形となってしまい、ゼミを行う意義が薄れるからだ。
ゼミを始めてから、やっぱりやめるというのは角が立つから、まずは同じ過去問を時間内に解くことを一緒にすることを数回重ねてから、様子を見るのが好ましい。
基本書・判例百選購読ゼミ
これは、お互いの苦手科目・得意科目が違う場合に効果を発揮するゼミである。
一方が憲法得意民訴苦手、相手が憲法苦手民訴得意といった場合などが例である。この場合、お互いがお互いに教え合うことを通じて理解が深まるし、「教えてやっている」という主従関係が発生しにくいところ関係性もうまくいきやすい。
具体的には指定の教科書など1冊の基本書・判例集をもとに、毎週講義2回分の内容を1回でインプットするというタイプのゼミである。その際、90分のうち30分基本書・20分判例・40分短答演習を意識すると良い。
インプットは結局のところアウトプットを意識するから定着する性質があるので、短答でも定義や規範を書いたり諳んじたりするだけでも意味があるので、アウトプットを意識する必要がある。
得意な方が有益な短答問題を数題厳選して相手に解かせる・解説をすることを通じて相互の理解が深まることが期待できる。
自主ゼミの組みすぎは良くない
結局のところ、自主ゼミはペースメーカーとしての役割が強い一方で、そのための準備時間等を考慮するとなかなか時間のかかる営為である。ローとなればそれに加えた課題やテスト対策もあるところ、そのバランスを崩せばうまくいかなくなってしまう。
短答ゼミは週2回、基本書・判例購読と論文ゼミを隔週で実施(計週3回)をとっているが、これはかなり多い方である。コストパフォマンスは常に意識して取り組む必要がある。ときには手を抜くことも必要なので、敢えて予習を雑にして挑むこともある。だが、手を抜きすぎると相手に失礼になってしまうので、自分の実力との対話が必要であろう。