ふくろうさんのホーホー日記

司法試験受験生の雑感

専門ゼミナール志望理由レポート

はじめに

大学三年次以降は専門ゼミナールが開講される大学が殆どである。

僕は、三年次に所属していたゼミがなんと2021年度は教員側の事情で開講されないこととなり、やむを得ず4年次になる今年も就ゼミ活動を迫られたのである。

大学1年次からお世話になっており、去年はSA(授業補助)や研究補助にも就かせて頂いた先生のゼミに入ることになった。コネはあるものの、かなりのレベルまで仕上げたレポートだと思うので、ゼミ志望理由をしたためる学部生には参考にしてほしい。

ちなみに三年次は憲法判例を精読することを主題とするゼミに所属していたが、21年度所属のゼミはドイツ法専門の教員でコロナに関連する法律問題を比較法の視点から検討しようとするゼミである。(公法・私法・刑事法という意味での)法領域の区別なく学修できるし時事問題の関心の延長線上にあると考えて志望するに至った。詳しくは本文を参照していただきたい。

(以下、本文)

1 なぜこのゼミを志望するのか

立法段階での批判的検討の重要性

かつて二年次に受講した「法学入門ゼミナール」において、私は特定継続的役務提供契約(特定商取引法41条以下)を中途解約した際の最高裁判決[1]特商法の規律についての報告をした。この判決は、外国語会話教室の受講契約を中途解約した際、清算規定による「役務の対価額」が高額になることから、違約金の定めを禁じた49条2項を潜脱するもので無効と示された事件である。

この事件を報告する際、特商法の規律を理解するために読んだ立法段階の政府審議会の資料[2]に、長期間にわたる役務提供型契約そのものを規制しようとする提案があったことを知った。実際にはこの提案は採用されなかった。その理由として、事業者の事業活動を直接制約すること、中途解約や抗弁権の接続が立法化されれば実質的に解決されうることが挙げられていた。立法段階の議論で事業者と消費者の利益較量を図るうえで、このような慎重な検討がなされていることを知り、新鮮に思った。この報告以前は、法学部での学修の多くは法「解釈」学であるところ、大前提にあたる法の規律について正面から考えることはなかった。確立された判例と学説の文脈を理解することに心血を注ぐ一方で、解釈の前提となる法規範が妥当なものか検討する視点に欠けていたと反省した。

私は将来法曹として法的紛争の解決だけでなく、情報法や消費者法分野等の立法措置にも関与できる法曹を理想としている。

批判的検討の素材としての比較法

立法措置を検討するにあたって、諸外国の現行法制が参照されることがある。直近の例でいえば、2020年7月1日からはじまったプラスチック製買物袋有料化制度がある[3]。これは、容器包装リサイクル法に関連する省令を改めることで、有料化を必須とする旨の規定を設けたものである。日本は従来どおりのプラスチック製のレジ袋を提供することを容認するが、有料化することを義務付けるという制度を採用した。この日本の配布容認・有料化措置はアメリカ、ワシントンD.C.の制度を参考にしたと考えられており、持ち手のない袋は有料化措置の対象外とされている点での共通点がある[4]。一方のフランスでは、方向性が異なり使い捨てのプラスチック製の袋(厚さ50μm以下)は提供が禁止されている(禁止型)。他にもアイスランドではレジ袋に対し課税する措置を執っている(租税型)。

レジ袋を有料化するにあたり、レジ袋を製造するメーカー組合からは繰り返し使用できる厚みのあるものは有料化措置の対象にするよう強い働きかけがあった[5]。その働きかけに説得力をもたせたのが、前述したフランスの厚さが50μm以上の袋が規制対象外となっている事実である。これにより、我が国においても厚さ50μm以上の袋は「繰り返し使用することが可能」であること、「過剰な使用抑制に寄与」することから有料化対象外となった。このようにあるべき立法措置について検討する際は、日本の社会実態に合わせながら諸外国の法制度を参照することがある。

コロナ・ウイルスは全世界的な蔓延によって、すべての国が未曾有の感染症への対応をすることが求められた。そこには、諸外国の社会情勢や文化的背景・政治権力の強弱によって対応に違いが現れていると考える。去る自民党総裁選挙で、石破茂議員が特別措置法の改正を提言[6]していたこともあり、諸外国の現行法制やドイツの比例原則の議論[7]を踏まえながら今後のあるべき立法措置について見識を深めたいと考えている。

 2 ゼミで扱いたいトピック

ここでは、①事業者の休業要請と休業補償の在り方について特別措置法を改正するべきかどうか、②国会での審議を「オンライン」で実施してもよいかどうかを挙げたい。

 3 どうしてこのトピックを選んだのか

①について

日本では自粛要請をベースとする感染対策がとられたが、実際には同調圧力という市民の集団監視機能に依存し、国家が福祉の役割を放棄したものではないかと考えている。事業者は営業することができない法的地位には追い込まれていないものの、同調圧力の強さや「公表」措置の事実上の不利益性を考慮すると、要請に逆らって営業を継続することは難しかったのではないかとするのが私の仮説である。前述の石破氏が総裁選中で特措法の提言したのも、このような問題意識に基づくものと考えられる。時事問題の延長でもあり、ドイツを含む各国の制度を比較することで議論が深まるのではないかと期待できる。

について

コロナ・ウイルスが拡大する中で、国会においても感染防止策が講じられた。衆議院本会議では、採決時以外は、定足数に留意しながら会派・議員の判断により全員出席することはしないこととされた。また、参議院本会議では座席数に余裕があることから、議員同士が離れて着席することとした[8]

大きな議論となったのは、国会におけるオンライン審議の可否・是非である。憲法56条1項では「総議員の3分の1以上の出席」という定足数要件が定められている。コロナ禍以前は「出席」を「物理的に議場に現在していること」と理解されていたが、オンラインを介した出席も許容されるか問題になろう。この点について、国会議員は「全国民を代表する」者であり、国会議員が抽象的な「全国民」を具現化する象徴的な存在を重要視する立場からは従来通りの理解を貫徹するべきとの見解がある。一方、感染症の蔓延など例外的な状況下では、会議の公開原則(憲法57条1項本文)の担保の一定の条件を満たしたうえでオンラインによる「出席」も、いわば「機能的出席」として許容する見解もある[9]。国会の出席の概念の理解をめぐって、諸外国ではどのような対応をしたのか比較・検討する意義はあると考える。

以上

 

[1] 最高裁平成19年4月3日第三小法廷 民集61巻3号967頁

[2] 産業構造審議会消費経済部会「今後の消費者ルールの在り方に関する提言」に基づく(通商産業省消費経済課編『平成12年度版訪問販売等に関する法律の改正』629頁(通商産業調査会・2000年)所収)

[3] 経済産業省環境省「プラスチック製買物袋有料化実施ガイドライン」 https://www.meti.go.jp/policy/recycle/plasticbag/document/guideline.pdf (2020年11月15日、最終閲覧)

[4] 後掲注・4 合同会議参考資料2 「レジ袋有料化に係る背景について」

https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/haikibutsu_recycle/reji_yuryo_wg/pdf/002_s02_00.pdf (2020年11月15日、最終閲覧)

[5] 中央環境審議会循環型社会部会レジ袋有料化検討小委員会・産業構造審議会産業技術環境分科会廃棄物・リサイクル小委員会 レジ袋有料化検討ワーキンググループ合同会議(第2回)議事録 25頁 日本ポリオフィレンフィルム工業組合・中川発言

https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/sangyo_gijutsu/haikibutsu_recycle/reji_yuryo_wg/pdf/002_gijiroku.pdf (2020年11月15日、最終閲覧)

[6] 朝日新聞デジタル2020年8月8日「石破氏、コロナ特措法改正を 強制力と補償はセットで」

https://www.asahi.com/articles/ASN886VQVN88UTFK009.html (2020年11月15日、最終閲覧)

[7] 比例原則をめぐる議論の重要性は、①概念そのものの重要性(公法の視点からの重要性)だけではない。「拡散は必ずしも収斂に向かうものではなく、文脈の諸条件の在りように応じて、異なる方向に展開していくこともある」という言説に代表されるように、②比例原則が世界的に普及する中で各国の法の文脈に即して受容されたことの重要性(比較法の視点からの重要性)があると考えている。

松本和彦『比例原則の意義と問題点―ドイツ流の比例原則を手がかりにして』 石川=山本=泉「憲法訴訟の十字路」85頁所収(弘文堂、2019年)

[8]森雅樹「第201回国会 主要成立法律」法学教室2020年9月号所収41頁

[9] 宍戸常寿 朝日新聞令和2年5月13日朝刊、 読売新聞・同年7月11日