7月8日 雑感

日頃の問題意識や活動を備忘録とするために開設したのが本ブログの趣旨だったが、開設以来一切貫徹されていなかった。今後は、このような司法試験受験生が得た問題意識や活動を雑感として記録することにしたい。

 

1 コロナ禍と法律問題

(1)特別定額給付金の受給権者は、基本台帳に掲載されている各個人なのか・世帯主なのか

手続的側面からアプローチすれば後者だろうが、世帯全体の給付金額の確定にあたっては前者を考慮していることから議論が分かれそうである・・・。

(2)感染者の行動歴とプライバシー情報

元来、プライバシー情報は私的領域に含まれる情報と考えられている。情報の性質ではなく、情報が展開されている領域に着目している。そのため、公道上での行動は、情報の性質から考えれば私的と評価できるが、領域に着目すると公道であるからプライバシー権の期待は減少する。

GPS訴訟の議論で山本龍彦が警察による情報監視への憲法的対抗として4つの類型を提示している(論究ジュリスト33号所収「AIと社会と法」146頁山本発言)。

引用すると、「①領域プライバシー権による対抗、②情報プライバシー権による対抗、③客観法的要素を権利論に織り込んだハイブリッド的思考による対抗、④純粋客観法思考による対抗」

 

2 情報法

(1)前述の箇所と関連するが、近時曽我部=林=栗田『情報法概説(第2版)』を講読している。

 (別にアフェリエイトしているわけではないので、本屋で手に取って買ってほしいです。アマゾンへのリンクはあくまで、ジャケットを紹介する意味です。 まあそもそも情報法への関心が高い読者は皆無だと思いますし

情報法概説 第2版

情報法概説 第2版

 

 私が最近関心を払っているのは、SNS上での表現行為に対して媒介者責任をどのような法律構成で追及するかという点である。

「忘れられる権利」に基づいた検索事業者への検索結果削除請求の最高裁決定(最決平成29年1月31日)なども詳述されている。

百選にも今般の改訂で追加された事件であるが、①アルゴリズムによる検索結果の表示は検索事業者による「表現」といえるかどうか、② ①が「表現」として評価されることを前提に「忘れられる権利」と表現の自由との利益衡量をどう図るかというのが論点である。

この事件については、百選解説(田代亜紀「ウェブサイトの検索結果の提供とプライバシー」)を参照されたい。百選解説は人によって有用性の差が顕著だが、田代先生の解説は本件決定における論点と判断枠組みへの解説が非常に簡明で試験対策の観点からも整理しやすく有用である。

わかりにくい例としては、石川健治薬事法違憲判決の解説とか長谷部恭男の堀越判決の解説。彼らはアカデミックな解説に終始しているので、(石川)「違憲性阻却事由」とか(長谷部)「海図もコンパスもなければ大海の航行は不可能」という表現を使うので、学修の至らない学部生ごときが読んでも理解はできないです。

石川解説に登場する「違憲性阻却事由」については、おそらく三段階審査論に基づく理解と思われるので、小山剛の「作法」を読んでから再読するとなんとなく理解できよう。

 

「憲法上の権利」の作法 第3版

「憲法上の権利」の作法 第3版

  • 作者:小山 剛
  • 発売日: 2016/08/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 余談だったが、情報法も公法との結節点を意識しながら学修すると、全体像をより把握できると考える。

 

今後もこのような雑感を掲載していくつもりである。頻度は保証しないが、あくまで、自身が表現主体として言論空間へアクセスする機会であり、自身の今後の問題意識や疑問をアウトプットすることを通じて自身の将来像をより明確にしようとするものにとどまる。よって読者諸君にとって有益性ある記事ではないことはあらかじめ断っておきたい。