7月12日 雑感

1 司法試験短答過去問

  • 平成30年司法試験短答 憲法 44/50
  • 平成30年司法試験短答 刑法 42/50

時期は空けているものの通年で解いたのはおそらく3回目くらい。いちおうの解答の根拠は抑えているものの、これが初見問題だったら正答率は絶対下がる。

過去問8割→本番7割(ボーダーは6割~6割5分くらい)が理想的な短答突破ラインかもしれない。

 

2 資本制劣後ローン

 

「資本性劣後ローンとは、資本的な性格を持った劣後ローンのことで、借入をしても自己資本と見なされるものを言います。震災対応型資本性劣後ローンは10年間の期限付きで自己資本を増やす効果のある貸付をしてもらえる制度です」(J-Net21 中小企業診断士 遠藤康https://j-net21.smrj.go.jp/qa/financial/Q0801.html

他の特定の債権または一般の債権より支払い順位が劣るローンのことである。会社が倒産した場合などは、その会社の資産の整理が行われる。しかし、残った資産は債権者全員に分配されるわけではなく、債権の種類によって優先順位が決まっている。たとえば、従業員の給与などは優先される債権とされ、その支払を優先させる。(付言すると、債権者平等原則からすると、倒産後の会社の資産は債権者に平等に分配される。しかし、これの例外として、先取特権などがあり、ここでいう従業員の給与は一般先取特権民法306条2号)にあたる。

債権回収の優先順位が低いことから、当然債権回収の期待も減少する。そのため、利率が高くなりがちである。しかし、負債にはならず資本に充当されることから、会社の自己資本比率が向上することで資金調達と財務改善を一気に行うことができる。無議決無配当株式との類似性が指摘されるが、定款を変更することなく同趣旨の資金調達を行うことができる。(無配当かというと利子がつくところ経営成績に関わらず配当のようなものを債権者に支払う必要はある。)

 

3 慶應LSの過去問を概観して

まず指摘するべきは、憲民刑の圧倒的な難易度である。予備試験と同等またはそれよりも少し簡易的な事例問題が出題される。他のLSと比較すると超ヘビーである。①答案の型と②典型論点の発見と展開、③事実関係の正確な評価が求められる。一般的な受験生までは①②は比較的できる(自身もそう。)問題は③である。挙げた判断枠組みと具体的に散りばめられた事実関係を何の事情なのか混同させないように評価する。

あと同期が、正当防衛が問われた刑法の論文で、「侵害を予期していたから防衛行為の相当性がない」と驚くベき論証を展開していた。確認的に述べておくと、正当防衛が認められるためには、①急迫不正の侵害が存在すること、②防衛行為に防衛意思が存在すること、③防衛行為は侵害行為に対するものとして相当性を有すること、が求められる。

そもそも侵害を予期していたからといって正当防衛不成立には流れない。侵害予期に加え、これに乗じて積極的に相手方を攻撃する意思がなければ正当防衛は成立する。そして、この侵害予期+積極的加害意思の類型はそもそもかかる行為が緊急行為性にかけるから①「急迫不正の侵害」にあたらないという問題である。この同期は、侵害予期類型を③防衛行為の相当性の要件に絡んだ論点だと思っていたようだ(そもそも同期は、正当防衛の要件が何か理解していなかったようだが)。

予備試験合格を主眼にせず、はなから「LSに行けばいいや」(それも通っている大学の上にあるLSに)という思考は、愚策だと思う。

条文と論点の結節点を意識しない答案は評価されない。自戒を込めて・・・